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復興レポート

特集
商店街のココロ粋「そば処 泉家」
2018/02/14

おいしいそばの店として地元の人から愛されてきた、本町通り商店街の「泉家」。古き良き町屋づくりの店舗は、大火によって跡形もなくなりました。店主の山下晶弘さんに、被災された方にとっての復興、そして再建への思いを伺いました。

泉家の新店舗外観(左)と火災直後の店舗跡地(右)

新店舗外観(左)と火災直後の店舗跡地(右)

1人の力ではなにもできない

出火当時の様子を語る山下晶弘さん

「家の前は煙で反対側に建つ北越銀行も見えないくらいでした」と出火当時の様子を語る山下晶弘さん

 退去命令から家を出るまでの時間はたった3分。「当日は屋根に登って30分以上水をまいていたので、焼けていく様子がわかるんです。勢いよく火の粉が降りかかってきて、どんどん海のほうへ移っていくんですよ。あれだけ火が回れば人力ではどうにもならない」。大火を目の当たりにした山下さんは、店舗に住んでいた母の手を引いて着の身着のまま店から飛び出しました。仕事場が焼け、将来が見通せないという不安の中、それでも「戻りたいという被災者の希望を尊重してくれた市役所には感謝しています」と話します。今は「ゆっくり、のんびり、一生懸命、楽しんで」と、再建を焦る心に言い聞かせています。


これからの第二の人生

 山下さんが選んだのは、昔と同じ町屋づくりの家で同じようにそば屋をやることでした。悩んだ末「やっぱりそば屋しかできないし、第二のそば屋人生としてそばのように細く長く仕事ができれば幸せ」と、ご家族の賛成もあって元の場所での再建を決めました。こだわったのは「とにかく焼ける前の状態に戻す」ということ。災害に強いまちづくりの一環で、本町通りにおける延焼遮断帯の形成(建物の不燃化)により、木造2階建だった店舗を完全に元通りに建築することはできないながらも、間取りや店の顔でもあった中庭と池も復活させ、できる限り昔の店の雰囲気に近付くように心がけながら、再びそばを打つことができる日を目指しています。

大火の証し

焼け跡から見つかったそば包丁

焼け跡から見つかったそば包丁

 「焼け焦げたそば包丁が目に入ったんですよね」。焼け跡に入った時、まるで見つけてくれと言わんばかりに目に入ったのが、愛用のそば包丁でした。もう厨房で使うことはできませんが、「私たちが生きている間は記憶は伝えられるけれど、いつかは忘れられてしまいます。このそば包丁があれば『うちのお店は確かに焼けたんだな』と記憶の足がかりになる。だから大事にしようと思っています」と、山下さんは話します。昭和7年の大火で整備された防火用水も、時の流れとともに蓋がされ、今回の大火では一時的に水利が不足する場面も見られました。それだけ記憶を受け継いでいくというのは難しいことです。「そば包丁は何十年も一緒にやってきた相棒みたいなものですから」。おいしいそばを打つ役目を全うしたそば包丁は、記憶をつなぐ大火の証しとして末永く受け継がれていくことでしょう。

Information

そば処 泉家 TEL.025-552-0238

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